俺には4つ上の37歳の兄貴がいる。

地元を出て、田関東大手の精密機械会社に就職した。

今じゃいわゆる中間管理職についている、らしい。

らしい、というのは、ここ数年会っていないからだ。

「お兄ちゃん、電話に出ないのよ」

ある日、ポツリと呟いた母の言葉も、最初は、さして大事には受け止めていなかった。

「仕事が忙しいんだろ」

母がおおげさに言っているのだと思っていた。

「お義兄さん、頭のてっぺんがハゲちゃってるんだって。仕事のストレスで。」

ハゲちゃっているんだって、といった嫁は、少し早口だった。

そういえば今日の夕方、義姉からうちの嫁に電話がかかってきていた。

義姉が言うには、原因は加齢ではなく仕事のストレスだと医者に言われたらしい。

「兄貴くらいの年なら、年齢的にハゲても別に不思議なことじゃないのにな」

と、大げさな風にとらえないように、軽く言った俺に

嫁は、黙ってスマホをよこしてきた。

それは、義姉から送ってきた姪っ子と兄貴が映った写真だった。

「兄貴、老けたな・・・」

写真では、てっぺんが、はげているのはわからない。

貧相な印象だと感じたのは、全体的に髪の毛が薄くなっていたからだ。

ここ数年、実家に帰ってこなかったのも、

両親にその容姿を心配される、というようなことを義姉に漏らしていたようだった。

「ねぇ、しばらくそっとしてあげてほしいって、お義母さんに伝えてくれない?」

嫁がこちらを伺うように見ている。

どうやら、こちらも母と義姉の板挟み状態になっているらしい。

兄貴がハゲるほどのストレス抱えちゃって、今大変らしいから、

落ち着いて向こうが連絡してまで待ってあげたら、と直接的に伝えてしまったら、

今度は、母が心配のあまり、ストレスを抱えかねない。

ある意味、似たもの同士の二人なのだ。

間に挟まれている俺は、今、伝え方を思案している最中である。コチラ